キム博士が北朝鮮で目撃したワームビア氏【調査会NEWS3389】(R03.1.26)

【調査会NEWS3389】(R03.1.26) ※このメールには返信しないで下さい。お問い合わせ等は代表荒木のアドレスkumoha551●mac.com(●を半角の@に変える)までお願いします。 ―――――――――――――――――――――― <キム博士が北朝鮮で目撃したワームビア氏>
 荒木和博
 以下は一昨年6月韓国の新聞に載ったドンチョル・キム博士のインタビュー記事です。キム博士から「日本の皆さんに紹介してもらいたい」とのことで、翻訳しました。保衛部取調室の拷問や強制労働収容所での生活など生々しい話ですが、オットー・ワームビア氏の目撃証言もあります。ぜひ御一読下さい。 ——————————————- 金東哲博士「水拷問で失神したワームビア氏目撃…サッカンモルで生物化学兵器も開発(論説委員パワーインタビュー 2019年6月5日付東亜日報WEB版)
 「2015年10月羅先特区で逮捕され11月平壌に押送された後保衛部で調査を受けた時でした。2016年初めに壮健な米国人青年が調査を受けるのを目撃しました。私が取調室で調査を受け戻るとき他の取調室から英語で声を張り上げるのが聞こえました。ときには悲鳴に近い声がしていました」昨年(2018年)6月ドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮国務委員長のシンガポール頂上会談を前にして北朝鮮が釈放した韓国出身米国市民権者、金東哲博士を先週インタビューした。金博士は北朝鮮に抑留されているとき米国大学生オットー・ワームビア氏が水拷問を受けていると推定される状況を目撃したと語った。金博士は北朝鮮の経験談を込めた本『境界人(Border Rider)』を6月に上梓する。
 「ある日廊下でその米国人青年が、頭と顔がびっしょり濡れて捜査官たちに支えられ、取調室からずるずると引きずられていきました。ほとんど失神状態で頭がうなだれていました。私も水拷問を受けたことがあるのでその青年もどんな調査を受けたのか直ぐにわかりました」
 金博士は「平壌での調査で受けた拷問の中でも最も耐えがたかったのが水拷問だった。取調室の中の水で満たされた浴槽の前に後ろ手に縛られたまま膝をつかされて頭を浴槽の中に押しつけられれば1分耐えるのも難しかった」と語った。金博士は水拷問で気力が尽き果て廊下を歩いていて2度も失神したときがあったと語った。
 金博士はワームビア氏が羊角島国際ホテルで宣伝スローガンが書かれたポスター1枚を剥がしてきた罪(国家財産窃取罪)と金正日の顔が描かれたポスターをくるくる巻いた権威毀損罪を合わせて強制労働教化刑15年を宣告されたことを釈放された後に知った。米国の名門州立大学であるバージニア大学の学生だったワームビア氏は、北朝鮮旅行中抑留されて15年の刑を宣告された。後に解放され米国に戻ったが6日後に死亡した。
▲北朝鮮、治療費名目で1億ウォン余り奪い取る
 金博士はワームビア氏を釈放するとき、北朝鮮が治療費名目で200万ドルを要求したという話を聞いて十分にあり得ることだと語った。金博士は「北朝鮮当局は病院費と治療費名目で私の妻から70万人民元(約1億2000万ウォン-約1200万円)を奪い取った」と言った。
 金博士は羅先特区に豆満江ホテルを建て運営するなど17年対北事業をし、北朝鮮当局に逮捕されて国家転覆罪などで10年の刑を宣告され服役し、昨年5月9日解放された。金博士は前現職軍人や専門家を秘密情報員として活用し核とミサイル関連の敏感な情報を収集したが、その動機について著書『境界人』で「人権死角地帯で閉鎖された北朝鮮住民の奴隷に近い悲惨な生活の解放に一助となるため、外部世界に真実の実像を伝達したかった」と語った。彼は「北朝鮮事業を本格的に始めて10年ほど経ったとき、韓国と米国の情報機関が協力を要請してきた。秘密諜報員になる危険負担もあったが拒絶しなかったのはそんな所信のためだった」と主張した。
▲北朝鮮のサッカンモルで生物化学兵器開発
 金博士は北朝鮮が2017年11月大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15型」を発射した平安南道平城近くには核開発関連地下研究所があり、ミサイル基地として知られた黄海北道黄州郡サッカンモルには生物化学兵器等非対称兵器も開発していると語った。
 2007年10月、平壌で会った核化学者(金策工業大学で核物理学の教授職を務め退職)が、自分が平城近隣の地下研究所で核物質製造過程を幾何学的に研究する仕事を10年余りしてきたと語ったとのこと。この科学者は核製造とミサイル開発に必須物質であり旧ソ連を示す「CCCP」と鮮明に書かれた純度99.9999%の四角い亜鉛の固まりももってきたが、この亜鉛塊は金博士が購入して保管しているという。
 サッカンモルは2016年3月北朝鮮が短距離ミサイルを試験発射したところだ。金博士が平壌で会ったサッカンモルの研究所の警備部隊軍人は「サッカンモルで非対称兵器が準備されている」と語った。サッカンモルがミサイル発射基地にとどまらず非対称兵器が準備されており北韓全域にある防空壕の中には非対称兵器を開発するための施設と設備があるところもあると主張した。平壌付近にも名称は化学工場、肥料工場だがVXやサリンガスのような猛毒性化学兵器と炭疽菌のような生物兵器が作られているという情報に接したという。
▲強制労働教化所生活
 金博士は北朝鮮最高裁判所で10年の刑を宣告され平壌外郭の山岳地帯の強制労働教化所で服役した。午前8時から午後6時まで土の掘削など各種労働をし1日3度の食事はすえた臭いのする褐色の飯としょっぱい味噌汁、塩漬けの大根、干した大根3きれが全てという生活が収容期間中一度も変わったことがなかったという。
 飢えをしのぐため野外作業をするとき木の実はもちろん生のジャガイモも隠れて食べて何度か下痢をした。セミの幼虫も生きたままで捕まえて食べたという。急斜面で作業をしていて親指が折れて自由に伸ばせないと言ってインタビューの途中曲がっている部分を見せてくれた。
 彼は地獄のような生活で死にたくなるたびに聞こえてくる神様の声は「虫よ、虫よ」だったという。虫のようなものであって生きて命をつなぎなさいという言葉に聞こえたと言い。雨が激しく降る日の夜監視人が聞けないときに声を出して泣いたと語った。
 金博士は2017年の夏平壌人民文化宮殿でジョセフ・ユン米国務省対北政策特別代表に会ったことが収監中最初で最後の面会だったと語った。ジョセフ・ユン代表は社会保障カード番号などを通して金博士が米国市民権者であることを確認し、どのような犯罪で逮捕されて裁判を受けたのか、量刑、どこで収監生活をしているのか、どんな待遇を受けているのかなどを聞いた。
 釈放当日、金博士は突然服を持って出た後、平壌人民文化宮殿で反省文1枚を書いて最高裁判所判事から釈放命令を受けてやっと解放されることを知った。平壌順安空港で搭乗した米国国務長官専用機で会った中央情報局(CIA)コリアミッションセンターのアンドルー・キム・センター長はこの間米当局がいかに多くの水面下の接触を為てきたか教えてくれた。キム・センター長は金博士が北朝鮮権力の恥部と各種軍事情報を知りすぎているため北朝鮮当局が釈放を強硬に拒否したと伝えた。ワシントンのアンドルーズ空軍基地に到着した後、機内にメラニア女史とともに入ってきたトランプ大統領は「あなたは米国の英雄だ。海外にいる国民の保護よりも優先すべきことはない」と言ったという。
 金博士は最初の予審では死刑判決を受けたが最高裁判所で10年に減刑されたのは奇跡のようだったとし、逮捕されるまで10年余り北朝鮮で多くの奉仕活動をし、特に羅先市外資誘致委員長として中国資本の誘致実績があった点、金正日国防委員長から受けた3回の表彰、そして米国の国籍者であるという特殊状況などが考慮されたようだと語った。
 金博士は自らが南北韓と米国、中国を往来したことを念頭に置いて本の題目を『境界人』としたと語り、「どこでも認められない境界人は常に孤独だ。単発性と使い捨て人生で消耗されうるという事実が本当にわびしい」と語った。 (具ジャリョン論説委員・荒木訳) /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// ■特定失踪者・拉致被害者パンフレット改訂版好評発売中。A4版20ページ・1冊200円。特定失踪者・政府認定拉致被害者・警察断定拉致被害者・救う会認定拉致被害者の写真と簡単なデータが記載されています。集会等でぜひご活用下さい。調査会ホームページからインターネットでご購入いただけます。 www.chosa-kai.jp/goods
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